「新しいフードに替えたら下痢をした」これは、とてもよくあるご相談です。多くは一過性ですが、切り替えのやり方次第で悪化も予防もできます。本記事では、なぜ起こるのか、今日からできる対処、安全な切り替え手順、受診の目安を実務目線で整理します。
1. なぜ下痢が起こるのか
腸内環境の急変
腸内細菌は、これまでの食事(たんぱく源・脂肪・食物繊維・炭水化物の種類)に適応しています。配合が急に変わると発酵バランスや浸透圧が乱れ、軟便〜下痢が起きやすくなります。細菌叢が安定するには日数が必要です。
栄養組成の差(脂肪・繊維・たんぱく源)
高脂肪化は消化負担を上げ、可溶性繊維が急増すると発酵が強まり一時的に便が緩くなることがあります。逆に不溶性繊維が乏しすぎても便形がまとまりません。たんぱく源(鶏・魚・ラム等)の変更でも反応が出ることがあります。
与え過ぎ・トッピングの同時導入
切り替え不安から量を増やしたり、複数の新トッピングを同時に入れると、消化限界を超えて下痢を誘発しやすくなります。原因の切り分けも難しくなります。
水分・温度・食器環境・生活ストレス
急な水分摂取の増減、極端に冷たい/熱い食事、洗剤の匂い残り、引っ越しや運動量の急変などのストレスも腸に影響します。
基礎疾患・寄生虫などの併発
膵外分泌不全、炎症性腸疾患、寄生虫・細菌感染などが背景にある場合、食事変更だけでは改善しません。血便・嘔吐・発熱・著しい元気消失などがあれば受診が先決です。
2. まず今日できる対処
一段階戻す:
切替途中なら配合比を一段階戻します(例:50/50→75/25)。
悪化するようなら24–48時間は旧フードで様子見します。
量を控えめに:
1回量を少なめ・回数多め(1日2回→3〜4回)にします。
食べ過ぎ防止と消化負担軽減に努めます。
水分・電解質:
常に新鮮な水を与え、暑熱時は脱水に注意します。
ふやかせる場合は、ぬるま湯で実施してください。
トッピング整理:
新食材は原因特定を容易にする為にも一度に1種類・少量から始ます。
プロ/プレバイオティクス:
短期的に腸内環境を支える選択肢になります。
製品選定は獣医師と相談をしましょう。
記録:
与えた量・時間・便性状・水分量をメモします。
これにより、改善/悪化の傾向が見えてきます。
不必要な絶食は避ける:
小型犬・子犬・基礎疾患持ちは低血糖リスクがあります。
絶食は獣医師指示がある場合のみ。
3. 失敗しない切り替え手順
もっともトラブルが少ないのは段階的切替です。
反応が強い子は10〜14日に延長して構いません。
- 1–2日目:旧75%/新25%
- 3–4日目:旧50%/新50%
- 5–6日目:旧25%/新75%
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7日目以降:新100%(便が緩ければ一段階戻す)
体質・原材料差・脂肪/繊維量の違いが大きいほど、ゆっくり進めるのがコツです。
4. 下痢を起こしにくい切替のコツ
配合差を見比べる:
粗脂肪・粗繊維・たんぱく源・炭水化物源の差が大きいほど慎重に切り替えます。
可溶性繊維を味方に:
サイリウム/ビートパルプ等は便形の安定に寄与します(過量はNG)。
温度と香り:
ぬるま湯で軽くふやかす・体温前後で嗜好性UP。
測る・守る:
計量カップ/電子スケールで実量管理。「なんとなく盛る」を避けましょう。
おやつは総エネルギーの10%以内:
腸内の急変を防ぐ基本ルールです。
生活リズム:
散歩・休息・給餌のタイミングを整え、ストレスを減らしましょう。
5. 受診の目安(該当すれば病院へ)
- 48時間以上続く下痢、血便、繰り返す嘔吐、発熱、強い腹痛、著しい元気消失がある場合。
- 子犬・老犬・持病あり:早めの受診が安全です。
- 短期間で体重減少や脱水サイン(口腔乾燥症など)。
- 処方食の変更・アレルギー疑い:獣医師の指示と検査計画に沿って行いましょう。
6. よくあるQ&A
Q1. 下痢したらすぐ旧フード100%に戻すべき?
まずは一段階戻す→24–48時間で改善傾向があれば、よりゆっくり再開します。
悪化や全身症状があれば受診をしましょう。
Q2. プロバイオティクスは使った方が良い?
犬の急性下痢で症状の短縮に寄与する報告があります。
菌株・製品により差があるため、獣医師に相談のうえ選定しましょう。
Q3. どんな犬でも7日で十分?
個体差があります。
敏感な犬や原材料の変更幅が大きい場合は10–14日かけた方が安全です。
Q4. 切替中にやってはいけないことは?
多種トッピングの同時導入、急な量増、香りの強い洗剤の食器残香、暑熱下の水分不足、不必要な絶食は避けましょう。
7. まとめ
- 主因は急な変更による腸内環境の乱れ。脂肪・繊維・たんぱく源の差も影響。
- 7–10日(場合により10–14日)の段階的切替+状態に応じて一段階戻すが基本。
- 軽症時は量を控えめ・水分確保・記録・プロ/プレバイオティクスの活用を検討。
- 受診の目安に該当する場合は、食事要因と決めつけず早めに病院へ。
ご注意:本記事は情報提供を目的とした一般的なガイドです。最終的な判断は担当獣医師の診断・指示に従ってください。各フードの成分や切替ルールはメーカー・個体差により異なります。症状が続く、悪化する、もしくは全身状態の変化がある場合は、ただちに受診してください。