タイから日本へ犬・猫を連れて入国する場合、タイは日本の区分で「指定地域以外」になります。
その為、マイクロチップ → 狂犬病ワクチン2回 → 抗体価検査 → 採血日から180日待機 → 事前届出 → 出国前臨床検査 → 到着時の輸入検査という厳密な順序で進める必要があります。
最短でも約7か月の準備期間がかかるため、できるだけ早い着手が無事にペットと一緒に日本へ帰国できる鍵となります。
1. 結論(要点のみ)
まず押さえるべきは「順序」です。
マイクロチップは狂犬病ワクチンより前、ワクチンは2回、そして2回目の後に採血して抗体価検査(0.5 IU/ml以上)。採血日が待機180日の起点となり、この180日を満たしてから日本に到着します。
到着の40日以上前にはAQS(動物検疫所)へ事前届出、出国前10日以内には臨床検査、到着時は輸入検査へ。条件を満たせば多くのケースで数時間〜12時間以内に解放されます。
なお、チップはISO 11784/11785準拠が必須で、一部「900 202」始まりのチップは無効扱いとなる事例があるため避けておくと安心です。
2. 日本入国条件(タイ=指定地域以外)
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マイクロチップ(ISO 11784/11785、ワクチン前に装着)。一部 「900 202」始まりのチップは無効扱いなので避けます。 農林水産省
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狂犬病ワクチン×2回(1回目は生後91日以上/2回目は1回目から30日以上かつ1回目の有効期間内)。 農林水産省
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抗体価検査(0.5IU/ml以上):指定検査施設で実施(2回目ワクチン後。同日採血可)。結果は採血日から2年間有効。 農林水産省
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待機期間180日:採血日(=Day0)から180日経過後に日本到着。未満なら不足日数を日本で拘留。 農林水産省
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事前届出:到着40日前までに到着予定港のAQS(動物検疫所)へ届出(NACCSまたはメール)。届出内容変更にも制限があります。 農林水産省
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出国前臨床検査:搭乗前10日以内に獣医師の臨床検査(犬はレプトスピラの臨床徴候も確認)。 農林水産省
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到着時の輸入検査:要件を満たせば12時間以内(通常数時間)で終了します。貨物/受託手荷物で手順が少し違います。 農林水産省
何から始め、どこまで揃えればいい?
出発計画が固まっていない段階でも、できるだけ早く取り掛かりたいのがマイクロチップ装着です。これはすべての書類と動物の同一性を紐づける「基礎」です。
ワクチン接種は①生後91日以上で1回目、②1回目から30日以上経過かつ1回目の有効期間内で2回目を行います。
続いて、2回目ワクチンのあとに抗体価検査です。採血はワクチン②と同日に行っても差し支えありません。結果が0.5 IU/ml以上であること、指定検査施設での検査であることが条件です。
結果は採血日から2年間有効ですが、入国の肝は採血日から数えて180日の待機を満たすことが必要です。ここで急いで入国してしまうと、不足日数を日本で拘留という事態になりかねません。
さらに、到着40日前までの事前届出(NACCSまたはメール)、出国前10日以内の臨床検査(犬はレプトスピラの臨床徴候確認を含む)をクリアし、ようやく到着時の輸入検査へ。書類が整っていれば、通常はスムーズに終わります。
3. タイ側の手続き(スワンナプーム空港)
どこで何をする?当日の動線をイメージ
タイ出国に必要なのは、バンコク・スワンナプーム空港の動物検疫所(DLD)で発給される輸出許可(Form AC)と英語のヘルスサーティフィケートです。
所在地はスワンナプーム空港の動物検疫所(DLD)です。多くの場合、フライトの数日前に検査を受け、問題がなければ証明書が発行されます。
日本側の要件(マイクロチップ番号、ワクチン記録、抗体価結果など)と、タイ側の書類の記載内容が一字一句レベルで一致しているかは重要なチェックポイントです。
書き間違いがあると到着時の審査で足止めされることがあります。
スワンナプーム空港動物検疫所 連絡先:qsap_bkk_export@dld.go.th
4. 推奨タイムライン(時系列でわかる逆算&順行プラン)
4-1. 逆算タイムライン(入国希望日からさかのぼる)
入国希望日=D0 として、手続きの“締切”を逆算します。まずは 採血日=待機180日の起点 を決めるのが肝です。
Day 0(入国当日):日本到着 → AQS輸入検査(要件適合なら原則12時間以内に解放)。
Day-10〜0:タイ側で臨床検査(犬はレプトスピラ徴候も確認)→ 英語の健康証明+輸出許可(Form AC)を取得します。
Day-40 まで:AQSへ事前届出(NACCS/メール)。※前倒し変更は原則不可の為、綿密な計画が必要です。
Day-180:採血日をこの日に設定(=ここから180日待機を満たしてD0に到着)。
┗ 採血は狂犬病ワクチン②の後(同日採血可)。指定検査施設で0.5 IU/ml以上。結果は採血日から2年有効です。
Day-210〜D-180:狂犬病ワクチン②(①から30日以上後、かつ①の有効期間内)。
Day-240〜D-210:マイクロチップ装着(ISO 11784/11785。ワクチン前必須)→ 狂犬病ワクチン①(生後91日以上)。
※ 航空会社の短頭種・大型犬・気温制限、IATA規格クレートは早めに確認・手配しておくと安心です。
4-2. 今日から始める順行プラン(時系列に沿って進める)
Step 1|今日〜1週目: ISO準拠のマイクロチップ装着(ワクチン前)。
┗ 一部「900 202」開始のチップは無効扱いの事例があるため避けるのが無難です。
Step 2|同日〜: 狂犬病ワクチン①(生後91日以上)。
Step 3|+30日以降: 狂犬病ワクチン②(①の30日以上後/①の有効期間内)。
Step 4|ワクチン②直後〜同日: 採血 → 抗体価検査(指定施設で0.5 IU/ml以上)。
┗ この採血日が「待機180日の起点」。
┗ 最短の入国可能日は「採血日+180日」。
Step 5|採血後〜: 180日待機。この期間中に渡航日を決め、到着40日前までに事前届出(NACCS/メール)。
Step 6|出発10日以内: タイのAQS/DLDで臨床検査 → 英語の健康証明+Form AC取得。
Step 7|出発当日〜到着: 航空会社規定・IATAクレートに沿って搭載。到着後、AQSで輸入検査(書類提出)。
Step 8|入国後(犬): 30日以内に自治体登録&年1回の狂犬病予防接種。
4-3. 早見表(最短間隔と依存関係)
- ワクチン②=ワクチン①から30日以上空ける(かつ①の有効期間内)。
- 採血=ワクチン②の後(同日採血可)。採血日が180日待機の起点。
- 事前届出=到着の40日前までにAQSへ。
- 臨床検査=出発10日以内に実施(犬はレプトスピラ徴候確認)。
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最短の入国可能日=採血日+180日(これより前は不足日数を日本で拘留)。
この並びで進めれば、最短でも約7か月が現実的な目安になります。迷ったら「採血日=起点」「到着=採血+180日」「事前届出=到着40日前まで」を三本柱にスケジュールを組み立てましょう。
5. 書類チェックリスト:日本入国
到着時の審査をスムーズにする最大のコツは、「必要な紙を、必要な順番で、矛盾なく」。以下を手元フォルダにまとめておくと安心です。
- AQSの事前届出控え(承認書)
- マイクロチップ番号(リーダーで読み取り一致/ISO規格)
- 狂犬病ワクチン2回の接種証明(製品名・接種日・有効期間)
- 抗体価検査の公式結果原本(指定ラボ、0.5 IU/ml以上、採血日から2年有効)
- 輸入検査申請書(到着時提出/NACCS可)
- 貨物扱いならAWB(航空貨物運送状)
6. 書類チェックリスト:タイ出国
- 輸出許可(Form AC)+英語のヘルスサーティフィケート(スワンナプームAQSが発給)。
- ワクチン記録、マイクロチップ証明。
- 航空会社のペット受託条件(便名、季節制限、短頭種可否など)—各社規定に従う。
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AQS所在地:**CE-1(Free Zone)**の貨物通関地区。 Customs Export Clearance
タイ側での出口管理も忘れずに。スワンナプームAQSでの輸出許可(Form AC)と英語の健康証明書に加え、ワクチン記録・マイクロチップ証明を携行します。
航空会社ごとの受託条件(短頭種の可否、季節の温度制限、クレート規格など)は事前に確認し、便名まで書面で控えておくと、空港での説明がスムーズです。
7. 到着空港・持込ルートの注意
港選びでトラブルを減らす
犬の輸入は指定空港に限られます。新千歳、成田、羽田、中部、関西、伊丹、神戸、北九州、福岡、鹿児島、那覇などが代表例。
猫は制限が比較的緩いものの、拘留の可能性がある場合は拘留施設が併設された港を選ぶのが無難です。
持込ルートは、受託手荷物なら手荷物引取場のAQSカウンターへ、貨物なら貨物地区で書類を受け取ってからAQSに進みます。空港ごとに導線が微妙に異なるため、事前に動線の地図やカウンターの位置を確認しておきましょう。
8. よくある落とし穴(拘留・入国不可の典型)
現場でトラブルになる原因の多くは、実は「順番」と「日付」。次のポイントに心当たりがあれば、準備段階で必ず修正を。
- ワクチンがチップ装着より先(原則無効扱い)
- ワクチン②が①の30日未満、または①の有効期間切れ後
- 抗体価を指定外ラボで実施、または0.5 IU/ml未満
- 180日未満で到着(不足日数は日本で拘留)
- 事前届出が到着40日未満、あるいは前倒し変更をしてしまう
- 犬を指定空港以外へ到着させてしまう
- マイクロチップ番号の読み取り不可/書類の番号と不一致
9. 公式ガイド・連絡先
制度や様式は更新されるため、最終確認は各機関の最新公式情報で行ってください。チェックすべき主な情報源は、日本AQS(指定地域以外の輸入フロー・様式・NACCS案内、詳細ガイド、指定検査施設リスト)、そしてタイDLD(Form AC・健康証明の発給案内)、スワンナプーム空港AQS(CE-1の所在地・実務案内)です。
10. ペットの帰国代行サポートを受けたい場合
タイから日本への帰国手続きは、マイクロチップ→狂犬病ワクチン×2→抗体価→180日待機→事前届出→出国書類→到着検査と工程が多く、日付管理や書類不備があると係留リスクが生じます。
「自力での進行が不安」「スケジュールや書類をプロにチェックしてほしい」という方は、帰国代行・相談サポートの活用を検討してください。
おすすめのサポート窓口
帰国代行・相談サービスを提供する Estrella(エストレージャ)をご紹介します。
個別事情に合わせた進行プランの相談、必要書類の確認サポート、航空会社やクレート規定のアドバイス、空港手続きの案内など、実務面での伴走支援を依頼できます。
- スケジュール逆算(採血日・180日待機・搭乗日・到着日など)
- 書類チェック(ワクチン記録・抗体価結果・事前届出・輸出健康証明 等)
- 航空会社/IATAクレート要件の確認・搭乗運用のアドバイス
- 当日の動線・手続き案内(内容は事前確認)
Estrella(エストレージャ)
エストレージャのオーナーは、ミニチュア・シュナウザー専門のプロブリーダーです。良質な遺伝背景と健全な気質を重視し、適正な手続きに基づいてタイを含む海外から犬を迎え入れながら血統向上に取り組んでいます。現場で培った輸入・検疫・飼養管理の知見があるからこそ、飼い主さまに実務的で信頼できるサポートを提供します。
ご注意:最終的な適用要件は各国当局・動物検疫所(AQS)・航空会社の最新ルールに従ってください。代行サービスの利用有無にかかわらず、必ず最新情報をご確認ください。
本記事は実務上のポイントを整理したもので、法的助言ではありません。各国当局・航空会社の最新要綱をご確認のうえ手続きを進めてください。